最新のエネルギー市場(2026年2月6日(金))は、地政学要因で「日中のモメンタムがひっくり返る」典型例でした。原油は朝方に軟化して始まったものの、米国時間に入って急反発。トレーダーは、今週オマーンで行われた米国・イラン協議が「中東での緊張激化というテールリスク」を実質的に減らしたとは言いにくい、と受け止め直しました。

引けにかけて、ブレント原油先物は68.05ドル/バレル(+0.74%)、**WTIは63.55ドル/バレル(+0.41%)**で取引を終え、序盤は重かったものの両方ともプラス圏で着地しました。

以下では、時間帯ごとに当日の値動きと主要レベル、ムードの変化、次のセッションに向けた示唆を整理します。


オーバーナイト:リスクプレミアムが縮むが、下げ止まりの気配

オーバーナイトでは、ブレント・WTIとも下落。イベント前によくある「外交がリスクを下げる想定でプレミアムを売る」動きが優勢でした。報道でも、米国時間に入る前は両指標が下げていたとされています。

テクニカル面では、出発点が重要でした。前日(木曜)は、オマーン協議で供給不安が和らぐ可能性が意識され、荒い値動きの中で原油は大きく下落して引けています(ブレント67.55ドル、WTI63.29ドル)。

そのため、トレンドフォロー勢にとっては、

  • ブレント:67.50ドル近辺
  • WTI:63ドル前半
    が直近の“基準棚(レファレンス)”になりました。ここを明確に割り込むと、1月に積み上がったリスクプレミアムが、さらに深く巻き戻される(下げが加速する)リスクがありました。

米国時間前:ストップを巻き込み、WTIが62.46ドルまで下落—支持線の試金石に

米国時間入り前、下押しが進む中でWTIは日中安値62.46ドル/バレルを記録。この水準が、その日の最重要サポート(下値支持)として意識されることになります。

この安値は単なる数字ではなく、センチメントのテストでした。市場は「協議の気配=中東不安の後退」と見て警戒を後退させる流れに慣れており、序盤の下げは“緊張緩和寄り”のポジションが残っていたことを映します。ただ、62ドル前半までの落ち方が速かった点は、流動性やリスク許容度が不安定だったことも示唆しました(他資産も含め、荒れやすい地合いが続いていたためです)。

トレーダー目線で言えば、こういう感覚です:
62.50ドルが持たないなら、ファンダメンタルズではなく“強制的な投げ”を取引している


米国時間:ヘッドラインでリスクプレミアムが再構築され、反転が鮮明に

転機は米国時間でした。ブレントとWTIは一時、1バレルあたり1ドル超の上昇となり、引けにかけて上げ幅をやや縮めたものの、日中の反転がはっきりしました。ショートカバー(売り方の買い戻し)と、新たなリスクプレミアム買いが重なった形です。

材料は、オマーンを介した米国・イラン交渉の“読み替え”です。イランは核問題中心で進めたい一方、米国は弾道ミサイルや地域への関与なども論点にしたい意向があり、隔たりが大きいまま——市場は「緊張が消えた」とは判断しませんでした。

コメントとしては、当日のムードを表すのは次のようなトーンです:
「良くなったと思った翌日、あるいは1時間後にまた悪くなる。イランを巡る“現状維持の神経質さ”だ。」

さらに、市場が“最悪シナリオ”を具体的に想定しやすい点も大きい。世界の原油消費の相当部分がホルムズ海峡を通過するため、本格的な緊張激化は、海上輸送リスクや保険料の上昇を通じて、期近物に地政学プレミアムを乗せやすくなります。


引けにかけて:上げ幅は縮むが、終値が「回復」を確認

引け際には反発分の一部を吐き出しましたが、終値がテクニカル上のメッセージになりました。

  • ブレント:68.05ドルで引け(一度下げた後、68ドル台を回復
  • WTI:63.55ドルで引け(日中安値62.46ドルから大きく戻し、下げが崩れなかったことを確認)

テープリーディング(値動きの読み)で言うと、「まずサポートが機能し、その後の反転で懐疑派が追いかけさせられた。ただし暴騰するほどの一方向にはならない」という形です。戦術的には、“戻り売り”から“押し目買い”へと空気が寄りやすいパターンでもあります。


内部要因:供給材料も“リスク物語”に厚みを加える

地政学だけではありません。供給面のニュースも、弱気に傾き過ぎるのをためらわせました。

  • カザフスタン:主要輸出ルート(ロシア経由)で、今月の輸出が最大35%減少する可能性。テングイズ油田が1月の火災から回復途上であることが背景です。供給は想定外に締まり得る、という警戒を残します。
  • サウジアラビア:アジア向けのアラブライトの公式販売価格(OSP)を引き下げ、約5年ぶりの低水準に。値下げが続くことは、「供給過剰観」や「需要の弱さ」を示す反対の物語にも燃料を与えます。

この綱引きがあったため、当日の上昇は“爆発的な上抜け”にはなりませんでした。リスクプレミアムは買える一方で、「供給が多く、需要が追いつかない」という議論もまた、簡単には消えないからです。


今後:次に効くレベルと、トレーダーが見るポイント

この日のポイントは、原油が「割れなかった」こと、そして引けにかけてイラン・プレミアムを再び織り込み直したことです。

次に見るべき水準

  • WTIサポート62.50ドル前後(当日安値62.46ドルが“最後の線”)
  • WTIピボット63.30〜63.60ドル(前日終値63.29ドルを上回り、当日引け63.55ドル近辺)
  • ブレントの焦点帯67.50〜68.00ドル(前日67.55ドル vs 当日68.05ドル回復)

次のセッションで注目

  • 米国・イラン交渉の具体的アップデート:進展を裏付ける材料が出ればプレミアムは急速に剥落しやすく、行き詰まりが見えれば再び積み上がりやすい。
  • ブレントが68ドルを上で維持できるか:シンプルですが、センチメントを左右しやすい節目です。
  • 供給関連の続報(カザフスタンの回復ペース、OSPシグナル):反発の自信を強めるか、削ぐかを決めやすい要素です。
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投稿者 Watanabe, Kenji

東京を拠点とする経験豊富な金融専門家である渡辺健司氏は、日本の大手証券会社でキャリアを積んだ後、現在は独立系アナリストとして日本株およびアジア市場のマクロ経済分析を専門としています。その鋭い洞察力と分かりやすい解説には定評があり、多忙な本業の傍ら、余暇を利用して invesfeed.com の寄稿ライターとしても活動し、グローバルな視点から個人投資家向けに最新の市場トレンドや投資戦略についての分析記事を執筆しています。

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